2026年6月16日、日本銀行は政策金利を1.0%へ引き上げました。これは1995年9月以来、約31年ぶりの高水準です。
「変動金利で住宅ローンを組んでいるけど、これから返済額はどうなるんだろう」——いま、そう不安に感じている人は少なくないはずです。私自身も投資を10年以上続けてきて、金利が動く局面の怖さと、正しく備えれば過度に恐れる必要はないことの両方を経験してきました。
この記事では、変動金利の住宅ローンが「実際にいくら増えるのか」、そして多くの人が誤解している「5年ルール」「125%ルール」の落とし穴について、煽りも安心論もなしで、数字ベースで整理します。最後に、自分のローン条件で具体的な金額を試算できるツールも紹介します。
そもそも、2026年6月の利上げで何が変わったのか
まず事実関係を整理します。日銀の政策金利は、2024年3月のマイナス金利解除以降、段階的に引き上げられてきました。2025年12月に0.75%へ、そして2026年6月に1.0%へと到達しています。
住宅ローンの変動金利は、この政策金利(短期金利)に連動する「短期プライムレート」を基準に決まります。つまり、政策金利が上がれば、変動金利も時間差で上がっていくという関係です。
実際、2026年4月には多くの銀行が変動金利を一斉に引き上げ、メガバンクの変動金利(最優遇)の平均は年1%を超えました。これは約15年ぶりの水準です。みずほ銀行で1.025%、三井住友銀行で1.275%といった具合に、かつて「0.4%台」が当たり前だった時代とは、明確に局面が変わっています。
「既に借りている人」と「これから借りる人」で影響は違う
ここは混同されやすいポイントです。
すでに変動金利で借りている人の場合、基準金利が上がっても、実際の返済額に反映されるまでには時間差があります。多くの銀行では年2回(一般的に4月と10月)の金利見直しがあり、そこで適用金利が変わります。さらに後述する「5年ルール」があるため、毎月の返済額そのものはすぐには変わりません。
これから借りる人の場合は、借入時点の金利がそのまま適用されます。今の局面では、変動金利を選ぶか固定金利を選ぶかの判断が、以前より難しくなっています。
変動金利が0.5%上がると、返済はいくら増えるのか
抽象的な話では実感が湧かないので、具体的な数字で見てみましょう。
たとえば、残高3,000万円・残り25年・現在の金利0.5%のケースを考えます。このとき毎月の返済額は約106,400円です。
ここから金利が0.5%上がって1.0%になり、その水準が残りの期間ずっと続いたとすると——
- 毎月の返済額:約106,400円 → 約113,000円(月約6,600円の増加)
- 完済までに支払う利息の増加:約200万円
「月6,600円くらいなら」と思うかもしれません。しかし、完済までの累計で見ると約200万円という大きな金額になります。さらに金利が1.0%上がれば追加負担は約400万円、2.0%上がれば約845万円にまで膨らみます。
これが、変動金利のリスクの正体です。1回あたりの増加は小さく見えても、長期間の積み重ねで効いてくるのです。
多くの人が誤解する「5年ルール」「125%ルール」の正体
ここからが、この記事で一番伝えたい部分です。変動金利には「5年ルール」「125%ルール」という仕組みがあり、これらは「あるから安心」と誤解されがちですが、実態は逆です。
5年ルール:返済額は5年間変わらない。でも利息は減らない
5年ルールとは、金利が変動しても、毎月の返済額は5年間据え置かれるという仕組みです(元利均等返済の場合)。
一見、家計を守ってくれる優しいルールに見えます。しかし、ここに落とし穴があります。返済額が据え置かれても、金利が上がった分の利息はしっかり発生しているのです。
返済額が同じなのに利息が増えるということは、その分だけ元金(借りたお金の本体)の返済が遅くなるということ。つまり「返済額が変わらない=負担が増えていない」のではなく、「負担の発生を先送りしているだけ」なのです。
125%ルール:1.25倍を超えた分は、消えるのではなく持ち越される
125%ルールとは、5年ごとの返済額見直しの際に、新しい返済額は直前の1.25倍までしか上がらないという仕組みです。
たとえば毎月10万円返済していた人は、どれだけ金利が上がっても、次の見直しでは最大12.5万円までしか上がりません。
これも一見、家計を守る仕組みに見えます。しかし——1.25倍を超える分が免除されるわけではありません。超過した利息は、返済期間の後半に持ち越されるか、最終的に完済時に一括で精算する形で残ります。
つまり5年ルールも125%ルールも、共通して言えるのは「払わずに済むのではなく、払う時期が先送りされるだけ」ということです。安心材料ではなく、むしろ「気づかないうちに負担が積み上がる」リスク要因として理解しておくべきです。
最大の落とし穴「未払い利息」とは
5年ルールには、さらに深刻なケースがあります。それが「未払い利息」です。
金利が大きく上昇すると、5年間据え置かれた毎月の返済額が、その時点で発生する利息分すら下回ってしまうことがあります。こうなると、毎月返済しているのに利息を払いきれず、不足分が元金に上乗せされていきます。
結果として何が起きるか。返済を続けているのに、ローン残高が増えていくという、悪夢のような状態です。
ただし、これは過度に恐れる必要もありません。未払い利息が発生するのは、現在の金利からかなり大きく(残り期間にもよりますが、おおむね+3〜4%以上)上昇した場合です。現実的な利上げシナリオ(ターミナルレート1.5%程度の想定)の範囲では、すぐに未払い利息に陥る可能性は高くありません。
大切なのは、「自分のローン条件だと、あと何%上がったら未払い利息が発生するのか」という具体的なラインを把握しておくことです。
では、どう備えればいいのか
金利上昇局面での選択肢は、大きく3つあります。
1. 繰上返済をする
元金を減らせば、その分だけ利息の負担も減ります。ただし、手元資金とのバランスが重要です。繰上返済に回すお金を投資に回した場合との比較も検討する価値があります。
2. 固定金利へ借り換える
これ以上の金利上昇が不安なら、固定金利への借り換えで「金利を確定させる」のも一手です。ただし借り換えには諸費用がかかるため、「諸費用込みで何ヶ月でペイするか」を必ず確認してください。
3. 何もせず、変動金利を継続する
実は、これも立派な選択肢です。変動金利は固定金利より低いのが一般的で、ターミナルレートが想定の範囲に収まるなら、変動のままの方が総支払額は少なくなる可能性もあります。重要なのは「不安だから何となく動く」のではなく、数字で判断することです。
まずは「自分の数字」を知ることから
ここまで一般論を書いてきましたが、最も大切なのはあなた自身のローン条件で、具体的にいくら変わるのかを知ることです。残高・残り期間・現在の金利は人それぞれで、影響額もまったく異なります。
おかねナビでは、変動金利が上昇したときの追加負担額と、未払い利息が発生する金利ラインを試算できる「金利上昇シミュレーター」を用意しています。残高・残期間・現在の金利を入力するだけで、5年後・10年後・完済までの追加負担が一目で分かります。
「なんとなく不安」を「具体的な数字」に変えることが、正しい判断の第一歩です。煽られて慌てて動くのでも、根拠なく楽観するのでもなく、自分の状況を数字で把握したうえで、落ち着いて選択していきましょう。
※本記事は2026年6月時点の情報に基づいています。記載の金利・制度は変更される可能性があります。実際の返済計画や借り換えのご判断は、契約している金融機関やファイナンシャルプランナー等の専門家にご相談ください。

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